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睡眠時無呼吸症候群の合併症(その1)
胃食道逆流症 「SASと胸やけ」

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と胸やけなどの症状がみられる胃の疾患・胃食道逆流症(GRED)(※1)。一見何の関連もなさそうな二つの疾患ですが、最近の研究で、OSAS患者の4割以上がGREDを合併していることが分かりました。

特にBMI値(※2)25以上の肥満気味の患者では頻度が高く、かつ重症です。

日本睡眠時学会定期学術集会(※3)での発表内容は下記の通りです。

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日本睡眠学会報告(2005.7.7)

睡眠時無呼吸症候群患者の 4 割超が胃食道逆流症を合併 肥満であるほど重症

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者の 4 割以上が胃食道逆流症(GERD)を合併 しており、特に BMI(肥満度指数)が 25 以上の患者ではその頻度が高く、かつ重症であ ることが分かった。中川循環器科・内科 OSAS センター(愛媛県松山市)センター長の中 川真吾氏の調査による。

中川氏らは、OSAS 患者 40 人に対して、睡眠ポリグラフ検査(PSG)、夜間の気道内圧 の測定、QUEST 自己記入式質問票で GERD の症状を評価し、さらに、その中で GERD が疑われた症例に対して胃食道内視鏡検査を実施し、GERD の有無を確認。
その結果、OSAS 患者 40 人中 17 人が GERD を高い確率で発症(合併率 42.5%)して おり、OSAS は中等症(平均 AHI27.8%)で、平均 BMI は 28.9 だった。なお、GERD 合 併者に H. ピロリ菌感染者はいなかった。

OSAS 患者 40 人を、重症度により A(重症)~D(軽症)の 4 群に分類(表参照)すると、 それぞれ 25 人、12 人、2 人、1 人となった。この中で GERD 合併者は、それぞれ 12 人、 3 人、1 人、1 人であり、OSAS が重症で、かつ BMI が高い型が GERD を合併する可能性 が高いことが示唆された。

sas1_osas.pngまた 17 人の GRED 合併者の内視鏡所見を GRED の重症度分類(ロサンゼルス分類。グレ ード A~D の 4 段階)に当てはめたところ、今 回の調査対象の中で、最も GERD の重症度がグ レード C と高かった 2 人はともに A 群だった。 さらにグレード B では、7 人のうち 6 人が A 群、 残り 1 人が C 群であり、A 群で突出して重症患 者が多いことが明らかになった。

中川氏は「OSAS では、上気道が閉鎖した状態で呼吸を行なうため、胸腔内が陰圧化す る。その結果、胸腔内圧は、通常の-5hPa 程度から、-40~-60hPa まで低下して胃の 内容物が逆流しやすくなり GRED を発症すると考えられる。この症状は肥満によって乗り 顕著になるのではないか」と話す。また、同氏は、GRED 合併者の約 3 割を占めた肥満度 の低い患者については、顎が小さい、奥まっているなど、骨格の形態により気道が狭くな っているために、同様の症状を引き起こすのではないかとしている。

(「日本睡眠学会速報」より)

  • ※1 胃液や胃の内容物が食道へ逆流することで生じる食道の粘膜傷害のこと。胸やけや喉の違和感、咳が続くなどの症状が現れる。
  • ※2 体格指数で 国際的にも認められている、肥満・やせの基準を表すもの。日本人の標準値を男女ともに22とし、25.0以上を肥満とする。
  • ※3 中川循環器科・内 科OSASセンター(愛媛県松山市)センター長の中川真吾氏による発表