睡眠時無呼吸症候群とは

症状と原因

症状

 呼吸が止まるため、深い睡眠を取ることができません。このため起こる昼間の自覚症状として、度々睡魔に襲われる、疲れがとれない、注意が散漫となる、頭の働きが悪い、どこででも寝られる、寝起きが悪い、などがあります。
他の症状としては、爆音のような大きくて不快ないびきと呼吸停止、血中の酸素濃度の低下などがあり、これが生活習慣病の原因となり、悪化を来すことからも、睡眠時無呼吸症候群が注目されています。

原因

 睡眠時無呼吸症候群には、2種類のタイプがあります。

  1. 中枢型睡眠時無呼吸症候群
    睡眠時に何らかの原因により呼吸中枢の働きが低下し、無呼吸となる。頻度は少ないが、ごく稀に死に至る。
  2. 閉塞型睡眠時無呼吸症候群
    舌根の沈下などによりノドが塞がり、いびきが発生し、無呼吸となるもの。頻度は高く、患者は200万人以上と言われている。最近の報道では、500万人~1,000万人とも言われており(2008年4月13日NHKスペシャル)、殆どが閉塞性睡眠時無呼吸症候群である。

閉塞型睡眠時無呼吸症候群の原因

  1. 睡眠時にノドの周りの筋肉の収縮度が低下するため、舌の根元(舌根)が喉に落ち込み、気道を塞ぐ。
  2. 肥満(喉にも脂肪が溜まり、喉が狭くなっている)。
  3. 顎が極端に狭い(舌根が落ち込む場所が狭い)。
  4. 首が短い、二重あご(舌根が落ち込む場所が狭い)。
  5. もともと喉が狭い。
  6. 口蓋垂(ノドチンコ)が長い。
  7. 舌が厚く、口が狭い。
  8. 鼻が曲がっている。鼻の穴が小さい(鼻が詰まり易く、口呼吸になる)。
  9. 副鼻腔炎(蓄膿症)で鼻が詰まっている(口呼吸になる)。
  10. 鼻アレルギーや鼻中隔彎曲症で鼻が詰まり易い(口呼吸になる)。
  11. 口を開けて寝る(口呼吸をしている)。
  12. いつも仰向けで寝ている。
  13. 両腕を頭の上に延ばし、万歳の姿勢で寝る(上気道が狭くなる)。
  14. 深酒をする。

診断

診断基準

 10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上現れる、または一晩7時間の睡眠中に30回以上現れる場合を睡眠時無呼吸症候群(SAS、 Sleep Apnea Syndrome)といいます。

診断方法

 いびきが大きくて、突然いびきが静まった時に呼吸が停止、そして呼吸再開時には再び大きないびきをかきます。呼吸が止まっているかどうかは、隣に寝ている人が判断してください。

 このような症状があり、自己診断テスト(自分で出来るSASの簡易診断法)で12点以上の場合は、専門機関を受診することをおすすめします。
 受診時、問診などにより睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、「終夜睡眠検査」という睡眠中をモニタリング(観察)する検査を行います。これは入院による検査となります。

検査での観察内容は、

  • 呼吸の状態:無呼吸の回数、無呼吸の長さ
  • 脳波の状態 :無呼吸による覚醒回数、睡眠の深度
  • 血中の酸素飽和度:酸素飽和度がどのぐらい下がっているか調べる

その他 、筋電図、心電図、眼電図などを記録します。診断の結果により、その後の治療法が決定されます。

治療方法

1. 健康保険対象の治療法

①CPAP(シーパップ)

cd606c5cc90196aa1b04a4789ff9376e_s.jpgContinuous Positive Airway Pressureの略称で、日本語では持続的陽圧呼吸療法といいます。
効果は確実で、第一選択の治療法です。機密性の高いマスクで鼻を覆い、その中にポンプで少し空気を送り込み、空気圧を上げます。この圧によりノドが広がり、呼吸が維持されます。効果は即効的です。
違和感、鼻粘膜の乾燥、空気漏れによる目の刺激などがありますが、調整により対応できます。

②口腔内装具(マウスピース、スリープスプリント)

下の顎を少し前方に突き出させるように工夫したマウスピースを口に入れて寝る方法。この装置を入れることで気道(空気の通り道)がひろがって、症状が軽くなります(舌を持ち上げ気道を広げる)。
小さいので出張や旅行に携帯することができます。丈夫なプラスチック製です。主として軽症者向きです。
歯を固定源にするので、残っている歯が少ない人(20本未満)には使えません。

③手術

鼻中隔彎曲症、肥厚性鼻炎があるSASは、手術が有効とされています。口蓋垂(ノドチンコ)や扁桃が肥大している場合は、切除します。他の治療法が無効の場合に行われます。

2. 体位療法(横向きで寝る…ヨコムキベルト)

横向き寝は、SASに有効です。上を向いて寝ると、舌の奥(舌根)が引力に引っ張られ、喉に落ち込みます。その結果、空気の通り道を塞ぐことになってSASになります。そのような人が横向きで寝ると、舌根が喉に落ち込まないので、効果があります。

この原理を応用したのが「ヨコムキベルト」です。体位センサー、バイブレーター、ベルトで出来ています。上向きで眠っていると体位センサーが感知し、バイブレーターが弱く振動します。その刺激で眠ったまま寝返りを打ち、横向きになると振動が止まります。ベルトをウエストに巻いて寝ると、上向き寝の時間が減少し、横向き寝の時間が増えることが立証されています。

横向き寝用の枕は、横を向いて寝る人に向いている枕ですが、上を向いて寝ている人を横向きにする枕ではありません。

3. ダイエット

肥満を伴うSASの場合は、有効です。しかし減量を維持するのは困難なため、多くは他の治療法と併用します。
肥満度が高い人が減量に成功すると、SASが完治することがあります。たんぱく質を摂り、摂取エネルギーを減らすことがダイエットの基本です。

4. 生活習慣の是正

①寝酒を止める
 アルコールは、舌根の沈下を促進するので症状が重くなります。また、睡眠の質が悪化すます。このため、少なめの晩酌とし、就寝時には酔いが醒めているのが望ましいとされています。
②禁煙
 喫煙は、気道に炎症を引き起こすので気道が狭くなり、SASが悪化します。
③運動する
 ダイエット効果を高めるため、有酸素運動の継続が望ましいのですが、非肥満のSASでも運動により症状が改善しますので、速歩など軽い運動を1日に30分程度、週に4回以上行うのが推奨されています。

さらに詳しい内容は、下記ホームページでご覧になれます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは