メールでいただいた事前質問、及び当日の質問への回答をまとめました。
質問1
加齢とともにノンレム睡眠が少なくなると聞きますが、質の良い睡眠を得るにはどのようなことを行えばいいのでしょうか?
回答(村井先生)
睡眠のリズムを整えることです。
ポイントは、①毎日、同じ時刻に起きる(起床時刻を変えずに就寝時刻で調節)、②太陽の光を浴びる(窓際で新聞を読むなどはなお良い)、③朝食を食べる(栄養のバランスが良いもの、最低限、たんぱく質と糖質を)。さらに、リラックスタイムをもつ(副交感神経が活発に働き、身体を休ませ免疫力を回復させる役割を果たしてくれます)こと、深呼吸するだけでも良いです、細かいことは気にしないこと。また、腸内環境を整えることがとても大事です。
良い睡眠を得るためには、自律神経を整えましょう、栄養素をしっかり摂りましょう。そして、体内時計を整えましょう。
質問2
現在、抗不安薬、睡眠薬を各1錠、就寝時に服用し、良く寝られています。
就寝10時、起床5時半、途中3時半am頃トイレに行きます。ベッドには枕を挟みラジオ(1時間で切れる)と部屋の明かりを調節するリモコンがあり、いつも薄明りを付けて寝ています。起床後、屈伸運動、腕立て伏せ、ラジオ体操で一日が始まります。天気の良い日は1時間のウオーキングを行い、毎回コースを変えています。森林コース、小川コース、近くの高等学校一周コースなどです。午前中はパソコンでメール等のチェックを行います。
今後も現在の状況の継続(生活と薬の服用)でよいか?
回答(以下、質問16まで髙﨑先生)
今飲んでいる2種類の薬、抗不安薬、睡眠薬が主治医の先生に症状をお話しし処方されたのか、それとも先生のほうから処方され、調子が良くなったのかを考える必要があります。薬は量的にそんなには多くないので、それで調子が良ければ、問題はないと思います。夜間や起きてからのお昼の運動も、良いと思いますので、理想的に過ごされています。このまま続けられると良いと思います。
質問3
SASが軽症な方の対症療法はマウスピースの装着といわれますが、加齢とともに症状が悪化しないのでしょうか?
回答
体重が急激に増えただとか、飲んでいる薬が急に変更になったとか、そういうようなことが通常ない限りは無呼吸の検査をして、指標でAHI=無呼吸低呼吸指数(下記注)というのがありますが、それが大きく変動するかどうかみます。例えば、体重の変化等ない場合、通常はCPAPの条件を変えることなく支障がなければ、その経過をみていけると思いますので、心配することはないと思います。大きな体の変化があった時には、なんらかの形でチェックすることも必要になります。
(注)無呼吸・低呼吸指数(むこきゅう・ていこきゅうしすう、apnea hypopnea index; AHI )とは、睡眠時の 無呼吸 と 低呼吸 の合計回数を1時間当たり平均回数として算出したもののことである。AHIの値が5以上(無呼吸または低呼吸が1時間あたり5回以上)で 睡眠時無呼吸症候群に該当することになる。
質問4
無呼吸指数、30〜70で重度との診断で半年ほどCPAP中です。
1)イビキをかくこと即ち、無呼吸状態なのでしょうか?
2)無呼吸が良くないのは血中酸素濃度が下がり、それをリカバーしようと心臓に負担がかかるからですか?
3)CPAPが苦しく煩わしく、またマウスピースも翌日顎が痛くなります。現在CPAP使用の際は睡眠薬を処方して貰っていますが、そこまでしてもCPAP治療はした方が良いでしょうか?
回答
CPAP療法を行っていて快適ではない理由の一つが、例えばマスクを締めすぎて気になって逆に眠れないとかがあるようですね。自分にとってどれが合うのか、睡眠センターで相談されると良いと思います。マスクの跡がついて、逆に眠れないようなことというのは、基本的には、ヘッドギアとマスクをうまくフィッティングさせていることが出来ていないということですので、もう一度、睡眠センターでマスクフィッティング(マスク合わせ)をすることが良いと思います。無呼吸低呼吸指数が高い値であれば重症の部類に入ります。なんらかの形で継続できるようにすることが大事です。自分で良くなったという体験が得られないと治療の継続が難しいと思いますので、しっかり相談されたほうが良いと思います。今の状態では脱落してしまう可能性がかなり高いと思います。
(追加質問)CPAPは対症療法にすぎないのでは、また、今後、新しい安全な治療法が出てくるのか。
回答:対症療法であることは間違いありません。しかし、対症療法という治療法は、例えば肺が悪い人に酸素を吸入しなくてはいけない場合、酸素療法を行うとかは必要なことであります。CPAPを止めれば元に戻ってしまうので、続けざるをえません。継続できる方法を模索して続けることが必要です。医療機関は一緒になって考えてくれるので、もう一度医療機関に相談して下さい。
質問5
睡眠科学センターで検査を受けました。夜中の寝汗がひどいことと家族に鼾を指摘されました。結果は、顎は小さいが緊急治療のレベルではない。歯科ではマウスピースは(難しい?)と。横向きに寝る努力はしていますが、肩が痛いので困っています。口にテープを貼ってみましたが、今は鼻を出してマスクを使っています。マスクをして鼻呼吸の積りですが、口が渇くことがあります。寝汗が減りましたので、夜中の目覚めも回数が減りました。高血圧の治療は受けています。
今の睡眠生活状態を継続すれば良いのでしょうか?
睡眠状態が改善されているかどうかは、もう一度検査を受けて調べたら良いのでしょうか?
横向きで寝ても、鼾は出るものなのでしょうか?
回答
横向きで寝てもイビキをかくかというと、イビキをかく人はいますが、仰向けとくらべたら横向きの方が圧倒的に少ないです。
それから、朝起きると唇がカラカラに渇くのは、呼吸の異常があった場合は、酸素の取り込みが悪くなって、炭酸ガスの吐きだしが悪くなります。そういう状態が続くと、脳波上覚醒します。脳波上覚醒は、脳波は覚醒した波形を示すけれど覚醒はしていない状態です。脳波上覚醒すると大きな呼吸が出ます。大きな呼吸が出ることによって、口中の水分を取りさらうことがあるので、口がカラカラになります。このような呼吸の障害は睡眠中に起こっています。だからしっかり、睡眠中の呼吸の状態を把握したほうが良いです。もしかしたら、体位だけの問題ではなく、もっと激しい変化が起こっている可能性があるということかもしれません。
質問6
妻からいびきが大きいと指摘されています。呼吸も時々止まっているようです。昼間に眠くなることはあまりないのですが、無呼吸の検査を受けるべきでしょうか。
回答
無呼吸の検査を受けて治療が必要ですよと言われる可能性もあるかもしれませんが、いびきをかいているだけでは、睡眠の質が悪いという証拠にはなりません。無呼吸を判定するには、しっかり検査を受けて、これなら問題なしと言ってもらえるか、それとも、治療が必要であると言われるかわかりませんが、きちんと検査をすれば、白黒つけられます。
質問7
薬を飲んでいるのですが、血圧が150より下がりません。先生から体質だから仕方がないといわれました。一人で生活しているのでいびきの大きさは、わかりません。
無呼吸だったら治療すれば、血圧が下がるでしょうか。
回答
年齢にも影響されますが、CPAP療法が適切に継続されると、基本的には血圧は下がります。ですが、CPAPをプラスしても十分な低下が得られるかどうかは分かりません。CPAP療法をプラスしても十分な低下が得られなかった場合は、CPAPのやり方が適切でないのか、投薬内容が良くないのかわかりません。投薬内容が良くないのならば、今は良い薬がありますので、しっかりと正常範囲まで血圧を落とせるような投薬内容に変えてもらうように主治医の先生と相談して下さい。
質問8
3年間、緑内障の治療をしています。発見が遅れ視野欠損があります。まじめにきちんと目薬をさしています。夫の話では、呼吸がたびたび止まっているようです。
緑内障と無呼吸は、関係がありますか。
回答
あるのではないかとの報告もありますが、私の患者さんで無呼吸に関連して緑内障になった人は、何千例も診ていても、私の記憶にはありません。文献もチェックしましたが、緑内障と睡眠時無呼吸は直接的な関係はないようです。あまり心配することはないと思います。
質問9
CPAPで治療しています。友人からの情報では、CPAPはネットで買えるそうです。ネットで買えるCPAPは、大丈夫ですか。
回答
ネットで買えることは承知しています。問題は何が一番重要かというと、マスクを継続的に使用しているとどうしても壊れます。それが壊れると、保険でカバーしてくれます。保険で3割負担の場合月々約5千円の支払いとなります。すると、1年間で6万円支払うことになります。自分でCPAPの機械を買う場合、付加圧をどれくらいにするかを医者の方から処方をしてくれなければ使えません。自分で買うマスクの値段は数万円します。保険の場合、1年間経つと新たに更新となります。そういったことを考えると、保険で医療機関に診てもらったほうが、うまく使えているかもチェックできます。自分で買った場合、医療機関を受診しないで済むメリットはあるとは思いますが、逆にいうと野放しになります。そういうことを考えると、保険でしっかりケアされたほうがベターと考えます。
(追加質問)ネットでは誰でも買えるとのことですが、安全性とか粗悪品とかの問題はありませんか。
回答:基本的には、保険で出されている機械もネット販売の対象になっていると考えられるので、機械的には問題はないと思います。ただ、保険では医療機関がフォローするので、そこが重要だと思います。
質問10
たびたび出張しています。CPAPを持っていくのは大変です。2泊ぐらいなら、CPAPをしなくても大丈夫ですか。代わりになるものは、ありますか。
回答
今使っている機械にもよりますが、サイズがどんどん小さくなってきており、医療機関で簡単に持っていけるくらいの小さいサイズのCPAPを処方してくれる可能性はあります。毎日、しっかり治療していて、たまたま2日間出張に出る場合は、荷物を増やしてCPAPを持っていかないといけないかというと、他の日はしっかり使っているのであれば、1~2日使うために持っていかなくても問題はないかなと思います。
質問11
CPAPをしていれば、アルコールを飲んでもいいですか?
回答
お酒を飲むと、眠気が増してそのまま寝ることが多いので、お酒を飲んで寝る場合は、しっかりCPAPのマスクを付けて、入眠されれば、そんなに心配することではありません。
質問12
夜間頻尿があり、CPAPの使用が大変です。目が覚めて眠れません。睡眠薬を飲んでおくと、寝つきが良くなりますか。主治医に頼めば、処方してくれますか。
回答
CPAPをしっかり使うのであれば、睡眠薬を飲んでも理論上は悪さはしません。ですが、例えば、アルコールの時もそうですが、睡眠薬を飲むとそのまま寝てしまって、CPAPを使わなくなる確率が高くなります。逆にいうと、非常に危険になります。自分でマスクをしてしっかりCPAPを付けて寝るとの意識があれば、通常、問題はありません。夜間頻尿は、CPAPを使うと夜間の排尿回数はかなり減少します。ですがCPAPを使っても夜間頻尿があるなら、尿道とかの病気の可能性があります。こういう場合は、泌尿器科の先生に相談して大丈夫かを確認する必要があります。
(会場からのコメント)個人的な経験で申し上げさせて頂きますが、私はCPAPを使って17年選手です。夜間頻尿が1~2回が通常だったのが、3~4年前主治医から、尿を出しにくくする薬があると言われました。その薬は膀胱を収縮さして、尿道の拡大を抑えるということと尿感の切迫を抑えるという薬で、頻尿を抑えるものです。これで、夜に目が覚めるとかの夜間頻尿は一切なくなりました。他に、心不全とかの経験があり足がむくむので、尿道を広げて出やすくする薬があり、これと頻尿を抑える薬を、朝両方飲んでいます。すると昼間も調子が良いです。不思議な経験です。
質問13
父も兄もSASです。遺伝しますか?
回答
遺伝します。睡眠センターでも、自分の親族に無呼吸の人はいますかと聞かれます。間違いなく遺伝ではなく、単独で睡眠時無呼吸の人もいますが、遺伝によって睡眠時無呼吸が発症することはあります。従兄弟に無呼吸の人が3~4人いれば可能性が高いです。遺伝によって気道の解剖学的変化が起こります。上気道のある部分が狭くなっていることも受け継いで無呼吸になってしまうということがあります。体質も遺伝すると言えます。
質問14
痩せているのに無呼吸だと診断され、ショックです。
太っていなくてもなる可能性があるのですか。
回答
中年の男性での発症は、体重の増量に伴う気道の相対的狭窄が主体です。従いまして、減量することによって、無呼吸の状態はかなり改善します。しかし、高齢者でもしばしば無呼吸症候群になる人たちがいます。そういう人たちはなぜおこるのかと言うと、基本的には呼吸するたびに脳の指示で気道を広げる筋肉が作用し、呼吸する直前に気道が広がります。それが、だんだん年齢とともに低下していきます。この低下から呼吸調節の問題がおこり、無呼吸がしばしば起こります。それは、痩せていてもおこりうることを表わしています。かなり高齢になっても無呼吸がおこるということは、十分考えられます。
質問15
タバコは完全禁煙ですか、少々ならいいですか。無煙タバコは大丈夫ですか。
回答
基本的には、タバコは間違いなく悪いです。無煙タバコにははっきりとは知識がありませんので正確な答えが出せませんが、喫煙はSASだけではなく、COPD(注)では、肺の組織を年齢とともに壊していきます、そういうことがしばしば起こった時にさらに進めば、肺がんを引き起こすとかありますので、基本的には、止めなさいと言いたいです。
(注)COPD:慢性閉塞性肺疾患のこと。主として喫煙により肺胞が破壊され、肺からの酸素の取り込みと炭酸ガスの放出が減少する病気。進行は、不可逆的で、悪化すれば酸素吸入(在宅酸素療法)が必要。
質問16
アルコール以外にやめた方がいい飲食物はありますか。無呼吸では、アルコールを飲んで悪いものがあるとのことだが、それ以外で何かありますか。
回答
飲み物とかそういうものではなくて、例えば、喫煙は粘膜の炎症を引き起こしてしまうので、SASとかの睡眠障害には良くありません。治療しなければ、例えば、睡眠導入薬とか、精神安定剤とかの薬を処方され飲むことによって、更に無呼吸の状態を悪化させると思われます。
(追加質問)アルコールは良くないけど、絶対ダメだとはおっしゃいませんでした。
回答:最終的には、本人が決めることです。例えば、イギリスではタバコを吸って呼吸困難になった時に、在宅酸素療法は受けさせないということもあるくらいで、本人が健康を保つように考えない人間には治療する必要はないとされています。タバコを吸うと気持ち良いと思うかもしれませんが、治療することを考えてほしいです。タバコを吸うことはそのうちにいろいろな病気が絡まってきます。自分が気持ち良いなら、自己責任で吸っても良いかなとも思います。ですけど、医者の立場でいうと止めるべきだと思います。アルコールについても、これと同じ考え方が成り立つと思います。
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